ミヒャエル・ギーレン指揮活動から引退
- 中川 康大
- 2014年11月5日
- 読了時間: 2分
10月30日付のBadische Zeitungによると、ミヒャエル・ギーレンが健康上の問題を理由に指揮活動から完全に引退することを決めたらしい。透徹した解釈、現代作品への理解で知られた。個人的にはドイツに渡った最初の一年間、語学学習のために住んでいたベルリンで彼の指揮を生で聴く幸運に恵まれた。エリアフ・インバルがシェフを務めていたベルリン交響楽団によく客演していた。この楽団では毎回彼らしい見通しのよい演奏を聴くことができたが、最も印象に残っているのは、カルロス・クライバーの死後まもなくベルリン国立歌劇場管と演奏したベートーヴェンの交響曲第7番である。ギーレンはいつものように楽団をコントロールして音楽を浮き彫りにしようとする。しかし演奏開始直後から楽団員が何かをたくらんでいるようににやけているのだ。楽団員は彼に逆らって思いっきり情感をこめて演奏し始めた。ギーレンは最初の方こそなんとかコントロールしようと努めていたが、一楽章が終わるころには完全に吹っ切れて(あきらめて?)、まるでクライバーのような生気みなぎる演奏をやってのけた。楽団も聴衆も大喜び。。。ギーレンとクライバー。若きころユダヤの血が入っていることが理由で渡ったアルゼンチンで出会った友人同士であった。
「その作品を聴きたいという者が少しでもいる限り、それは演奏されるべきである。」この言葉通りの指揮者生活であったと思う。
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