テオバルト・べーム
- 中川 康大
- 2013年6月24日
- 読了時間: 2分
更新日:2020年8月29日
ドイツに戻ってきてまだ数ヶ月もしていない頃のこと。
ギャラリーにひとりのおばさんが入ってきた。オーナーのお客さんかと思っていると、私に用があるという。バッグをゴソゴソして彼女が私に手渡したのは、あろうことかTheobald Böhm(テオバルト・べーム)の著作3冊であった。
テオバルト・べームはミュンヘンに生まれたフルート奏者・作曲家・発明家で、現在一般的に使われているフルートシステムを今から160年以上も前に開発した偉大な人物である。
聞くと彼女はべーム家の末裔の奥様とのこと。ギャラリーのすぐそばに住んでいて、私がギャラリーでフルートを吹いている姿を見て気になっていたそうだ。 近年、べーム家の別の末裔が、べームの(またはべームに関する)著作を一所懸命に復刻しているのだが、それを私に紹介してくれたのだ。これらの著作は膨大な数にのぼるた
め、来るたびに数冊持ってきてくれて、前に貸してもらった本を返すというやりとりをしている。
それにしても、今では当たり前のように使われているこのシステムにたどり着くまでには途方もない能力と努力が必要だったのだ!と、読めば読むほど痛感させられる。 我々はひとこと 「べーム式」 などと呼んで済ませるが、この人物の存在無くして正にこの語もシステムも、そしてその楽器に付随したレパートリーも、我々の心に残る名演奏の数々も!、、、もしかすればなかったかもしれないのである。
もちろん、彼の生きた時代は楽器のシステム改良の過渡期で、彼がいなくてもきっと、という風に言うこともできるのであろうが。
ミュンヘンでは上述の末裔の頑張りもあり、数年に一度テオバルト・べームコンクールが開かれるなど彼の業績に対する再評価も進んできている。

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